大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和43年(特わ)92号 判決

本店所在地

東京都台東区松ガ谷二丁目七番七号

早稲田自動車株式会社

(右代表者代表取締役 早稲田辰雄)

本籍

北海道旭川市二条通二丁目右五号

住居

東京都台東区松ガ谷二丁目七番七号

早稲田自動車株式会社代表取締役

早稲田辰雄

大正一一年三月五日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当栽判所は、検察官中野泰出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告早稲田自動車株式会社を罰金四五〇万円に、

被告人早稲田辰雄を懲役三月に各処する。

被告人早稲田辰雄に対し、本栽判確定の日から二年、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告早稲田自動車株式会社は、東京都台東区松ガ谷二丁目七番七号に本店を置き、各種自動車の修理並びに販売等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人早稲田辰雄は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れるため売上を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年二月一日より昭和四〇年一月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙一修正損益計算書記載のとおり三、二九〇万三、五二三円でこれに対する法人税額は一、二二二万二、四二〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年三月三一日、同都台東区駒形一丁目八番一〇号所在の所轄浅草税務署において同署長に対し、所得金額は二四一万五、三三八円でこれに対する法人税額は六七万七、〇四〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、一五四万五、三八〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した。

第二、昭和四〇年二月一日より昭和四一年一月三一日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙二修正損益計算書記載のとおり二、三一九万七、一八五円でこれに対する法人税額は八二四万一、八〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年三月三一日、前記浅草税務署において同署長に対し、所得金額は四七三万八、〇二二円でこれに対する法人税額は一四二万六、九六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額六八一万四、八四〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、登記官佐野直作作成の登記簿謄本二通

一、早稲田初枝の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書一通(昭和四三年二月七日付=以下四三・二・七付の如く略記)

一、吉野喜吉の検察官に対する供述調書

一、押収にかかる元帳計二冊(昭和四三年押第八六九号の一、二)、総勘定元帳二冊(同号の七)、現金出納帳計三綴(同号の八、九、一〇)並びに法人税確定申告書計二綴(同号の二五、二六)

一、被告人早稲田辰雄の検察官に対する供述調書二通

一、被告人早稲田辰雄の当公判廷における供述

(二)別紙各修正損益計算書の各勘定科目のうち、

(1)  売上高について、

一、大蔵事務官野見山雅雄作成の雑売上高調査書

一、押収にかかる現金売上帳二綴(前同号の三)、車輛入出庫帳計五四冊(前同号の五、一七、一八、一九、二〇)、売上帳二綴(同号の一五)、同二袋(同号の一六)、売上整理帳一冊(同号の二一)並びに代引整理帳一冊(同号の二二)

一、被告会社代表取締役早稲田辰雄作成の上申書(売上)一通

(2)  期首棚卸高及び期末棚卸高について、

一、早稲田初枝の検察官に対する供述調書一通(四三・二・一三付)

一、押収にかかる仕入帳計四冊(前同号の一一ないし一四)並びに車輛入出庫帳計五一冊(同号の一七、一八、一九)

一、被告会社代表取締役早稲田辰雄作成の上申書二通(棚卸及び売上)

(3)  当期仕入高について、

一、大蔵事務官野見山雅雄作成の雑仕入高調査書

一、押収にかかる仕入帳計七綴(前同号の四、一二、一三、一四)

一、被告会社代表取締役早稲田辰雄作成の上申書(仕入)一通

(4)  給料手当について

一、押収にかかる出納帳一冊(前同号の六)

(5)  消耗品費、通信費、諸税公課、交際接待費、旅費交通費、広告宣伝費、営業雑費、支払手数料並びに代金取立手数料について、

一、大蔵事務官野見山雅雄作成の簿外営業費調査書

(6)  利子割引料について、

一、日本勧業銀行浅草支店長大川四郎作成の証明書綴

一、東海銀行千住支店長井上博幸作成の証明書二通

一、北部信用組合本店長松沢重秋作成の証明書並びに利息の支払証明書

(7)  減価償却費について、

一、被告会社代表取締役早稲田辰雄作成の上申書(建物取得)一通

(8)  受取利息について、

一、大蔵事務官野見山雅雄作成の簿外受取利息調査書

(9)  貸倒準備金戻入、価格変動準備金戻入並びに損金計上罰科金について、

一、浅草税務署長堀敏夫作成の証明書一通(四三・二・一付=但し、添付の修正申告書写を含む)

(10)  貸倒準備金繰入並びに価格変動準備金繰入について、

一、浅草税務署長堀敏夫作成の証明書一通(四三・一・二四付)

(11)  貸倒損失について、

一、被告会社代表取締役早稲田辰雄作成の上申書(売上)一通

(法令の適用)

被告人早稲田辰雄の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項に各該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内において同被告人を懲役三月に処し、なお諸般の情状を考慮して刑法第二五条第一項を適用して本栽判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

被告早稲田自動車株式会社については、その代表者たる被告人早稲田辰雄が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第五一条第一項に従つて同法第四八条第一項の罰金刑を、また第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従つて同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断することとし、よつて同被告会社を罰金四五〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(栽判官 近藤暁)

別紙一

修正損益計算書

早稲田自動車株式会社

自昭和39年2月1日

至昭和40年1月31日

〈省略〉

別紙二

修正損益計算書

早稲田自動車株式会社

自昭和40年2月1日

至昭和41年1月31日

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例